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結論ありきの政府方針

   天皇陛下学習院時代のご学友である明石元紹氏が、『文藝春秋』本年二月号で、有識者会議の方針に異議を唱えている。氏は、政府が陛下の御譲位に関して、一代限りの特例法で対応しようとしているのに対して、陛下から直々に恒久的な制度化のご内意を告げられた人物である。明石氏は、同じく学習院卒の麻生副総理から紹介された杉田和博官房副長官に面会し、陛下のご内意を伝えたところ、杉田氏から「退位を実現させるには、国民の代表である国会議員の総意が必要です。今上陛下一代限りの退位であれば、合意を取りまとめることができるでしょう。しかし、将来まで含めた恒久的な制度については、国会議員の総意を得るのは大変難しい」と言われたことを明かし、「あのときの杉田氏の態度を思い返すにつけ、有識者会議で専門家の意見を聞いているふりをしながら、実際には政府の方針は初めから決まっていたのではないかと、勘繰らざるを得ません」と述べている。おそらくは実際その通りであろう。

http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/2119

韓国大使召還は称賛に値せず。

   安倍首相が駐韓大使・釜山総領事を召還したのを褒める意見もあるが、全く称賛に値しない。はじめからこうなることは分かっていた。日韓合意そのものが間違っている。既に1965年の日韓基本条約の時点で、韓国は莫大な経済援助(8億ドル)と引き換えに対日請求権を放棄していたのであるから、安倍内閣は如何なる謝罪も賠償もする必要もなかった。首相自身、法的賠償責任がないことを知っていたからこそ、韓国政府にではなく、飽くまで民間の市民団体に対する道義的賠償という形にしたのである。しかし、日韓基本条約では、個人に対する如何なる賠償も韓国政府が行うことになっているのだから、日韓合意は基本条約違反であるか、さもなくば、基本条約そのものが死文化していると言わざるを得ない。国家間で正式に結ばれた条約がかくも簡単に反故にされてしまうのであれば、日韓合意もまた、政権が変われば反故にされ、また対日請求権が蒸し返されるだろう。また日韓合意は国家が外国の個人に賠償するという悪しき前例を作った。こんなことがまかり通れば、仮に韓国政府によって日韓合意が反故にされなくても、今度は日本政府により日本企業で軍事産業などに従事させられた「徴用工」や、朝鮮半島に残してきた財産処理の問題など、次から次へ新しい個別賠償問題が噴出し、収拾がつかなくなる。盗人に十億円を貸して、返さないことを非難しても仕方がない。貸した奴が悪いのである。

拉致問題発生から四十年に想う

今年は、北朝鮮による拉致問題が発生してから四十年の節目である。かつて保守派のホープと目され、対北強硬論の急先鋒であった安倍首相は、政権に就いてからこれまで何をして来たのか。北朝鮮拉致問題の再調査を約束したストックホルム合意を履行せず、核開発やミサイル実験を繰り返すたびに「アメリカと協調して毅然たる措置を取る」と言うだけで、現実には無為無策に甘んじて来たのではなかったか。確かに、我が国の特殊部隊が北朝鮮に乗り込んで拉致被害者を強制奪還することは困難である。しかし、邦人拉致という我が国の主権にたいする重大な侵害行為への報復として、朝鮮総連並びにその傘下にある全国の朝鮮学校を解体し、資産没収、総連職員の国外追放等、断固たる措置を取ることは出来た筈だ。アメリカが拉致問題で我が国に協力することは絶対にない。国連が何をほざいても北朝鮮は痛くも痒くもない。他力本願ではなくて、自国の主権は自国で守る、そうした自主独立の気概がないから何も出来ないのだ。

荒木和博氏は言う、「実は今の内閣、安倍さんは拉致被害者を本気で取り返そうという気がないんじゃないかと、残念ながらそう思わざるを得ない。逆に「安倍さんならやってくれるだろう」という安心感、淡い期待感で、拉致被害者に関する運動それ自体が低下している事を懸念しております、国会答弁を聞いても結局アメリカに頼るということが出てきてしまう。そういう内閣ですから、やはり安倍晋三という人に、期待はしても信頼はできないと思っています。これは国民の声で変えていくしかない。「絶対に許せない」という国民の思いが高まってくれば、どういう政権であっても動かざるを得なくなるだろうと思います。」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170103/k10010827571000.html

政治家の心情倫理と責任倫理

稲田防衛相が靖国参拝したのは、首相以下我が国の大臣として当然の行動である。しかし、その当然のことすら首相以下の大臣たちが出来ないなかにあって、稲田大臣の参拝は称賛に値する。稲田大臣は我が国で数少ない愛国政治家であるが、同じく愛国政治家から変節した安倍首相の同調圧力に屈しかけている。政治家は常にマックス・ウェバーのいう「心情倫理」と「責任倫理」の狭間で葛藤しているが、大概政治家がいう「政治は結果責任」や「名を捨て実を取る」等の言葉は、自らの変節を正当化するための方便として使われる。稲田大臣には「責任倫理」を口実に「心情倫理」を捨て去るようなことはして欲しくない。

http://www.sankei.com/politics/news/161229/plt1612290013-n1.html

八木秀次氏のヒアリングに対する異議

   安倍首相のブレーンとされる八木秀次氏は、有識者会議のヒアリングで「生前退位」について次の様に述べている。

「現行憲法皇室典範が「退位を排除する理由は主として、①自発退位や強制退位など、退位には政治利用の可能性があり、国民を対立・抗争の関係にする。②自由意思による退位を認めると同じく自由意思によって次代の即位拒否、短期間での退位を認めなければならなくなり、皇位の安定性を揺るがし、皇室制度の存立を脅かす。この①、②というところが明治の皇室典範、現在の皇室典範を起草するにあたって一番踏まえられた点であろうかと思います。そして、これまでの政府見解は、天皇の生前での退位を一貫して否定してきた。そして、皇位継承権を有する男性皇族が限定される中、退位の容認は皇位を一気に不安定にする。」

   この八木氏の考えは、天皇は「玉」として自由意思を認めず、お飾りの存在にして神棚に祭り上げておけば良いという傲岸な発想であり、「尊皇攘夷」の名の下に御所に大砲をぶっ放す如何にも長州的な発想だ。明治の典範で伊藤は譲位に反対したが、井上毅は賛成している。つまり終身在位は明治政府内部の一致した考えではない。むしろ伊藤が譲位に反対したのは、袞竜の袖に隠れて長州の専制を可能にするためではなかったか。維新の功労者である伊藤を悪く言うつもりはないが、別に終身在位でも政治利用は起り得る。また皇位継承資格者が限定されるなかでの御譲位は、皇位の安定的継承を脅かすというが、それは政府の政策的無作為を棚に上げた議論であり、文句は陛下ではなく政府に対して言うべきである。倒錯した議論である。

当会顧問、坪内隆彦氏の新著『GHQが恐れた崎門学』(展転社)が刊行!

%e3%80%8eghq%e3%81%8c%e6%81%90%e3%82%8c%e3%81%9f%e5%b4%8e%e9%96%80%e5%ad%a6%e3%80%8f%e8%a1%a8%e7%b4%99当会顧問の坪内隆彦氏による待望の新著が刊行される。その名も『GHQが恐れた崎門学(きもんがく)―明治維新を導いた國體思想とは何か』(展転社)である。

著者はこれまで『アジア英雄伝』や『維新と興亜に駆けた日本人』(何れも展転社)などの著作を出されているが、本作は、幕末の志士たちに影響を与えた五冊の書として、浅見絅齋の『靖献遺言』、栗林潜鋒の『保建大記』、山県大弐の『柳子新論』、蒲生君平の『山陵志』、頼山陽の『日本外史』を取り上げ、それぞれの史的背景や根底思想について論じている。

なかでも本作の特徴は、上述した五冊の書を、江戸前期の儒者・神道家である山崎闇齋の創始した崎門学の系譜のなかに位置づけ論じていることである。崎門学は、我が国の皇室を中心とした君臣父子の大義名分を説き、後に伊勢・吉田神道の流れを汲む垂加神道と合一して、幕末における尊皇攘夷運動に多大な影響を与えたとされる。

僭越ながら筆者(折本)も、著者とこの崎門学を共に研究し、ご指導頂いている間柄から、本作ではその巻末において「今何故、崎門学なのか」と題する拙文を掲載して頂いた。

来年、明治維新から百五十年を迎えることから、巷間では明治維新の史的意義を顕彰する動きが出始めている反面、これに楔を打つかのように、幕末維新の歴史を、単なる利害衝突や権力闘争の歴史として切り捨てるような言説も流布している。そこで著者は本作の「補論」において一節を割き、歴史を高みから批評するのでなく、崇高な大義を掲げて歴史を切り開いた先哲を謙虚に仰ぎ見る姿勢の重要性を強調している(「原田伊織『明治維新という誤り』批判序説」)。

崎門学を学ぶ同志の一人として、本作が、閉塞感にあえぐ現代の若者にとって思想的な発火材になることを期待するものである。

(崎門学研究会代表・折本龍則)

 

 

第四回、『靖献遺言』を読む会のお知らせ

第四回、『靖献遺言』を読む会の開催日時が決定いたしましたので、お知らせいたします。テキストは前回に引き続き、近藤啓吾先生の『靖献遺言講義』(国書刊行会)を使用致します。次回は第七巻の劉因と第八巻の方孝孺を読み、併せて全体の総括をする予定です。

つきましては振るってのご参加をお持ち致しております。

日時:平成二八年十月一日(土曜)
午後二時開始
場所:千葉県浦安市当代島一ー三ー二九
アイエムビル5F
連絡先:〇九〇ー一八四七ー一六二七
(代表・折本)

西岡和彦先生講演を拝聴

西岡先生講演の様子
西岡先生講演の様子

過ぎたる平成28年6月3日、日本国体学会主催の講演会で西岡和彦先生のご講演を拝聴した。西岡先生は、国学院大学教授で垂加神道研究の第一人者であらせられる。講演は「「大祓詞」に見る我が国体観」と題して行われ、その後の質疑応答では小生も質問した。今回、このような貴重な機会を頂いた主催者の皆様に衷心より感謝を申し上げます。