八木秀次氏のヒアリングに対する異議


   安倍首相のブレーンとされる八木秀次氏は、有識者会議のヒアリングで「生前退位」について次の様に述べている。

「現行憲法皇室典範が「退位を排除する理由は主として、①自発退位や強制退位など、退位には政治利用の可能性があり、国民を対立・抗争の関係にする。②自由意思による退位を認めると同じく自由意思によって次代の即位拒否、短期間での退位を認めなければならなくなり、皇位の安定性を揺るがし、皇室制度の存立を脅かす。この①、②というところが明治の皇室典範、現在の皇室典範を起草するにあたって一番踏まえられた点であろうかと思います。そして、これまでの政府見解は、天皇の生前での退位を一貫して否定してきた。そして、皇位継承権を有する男性皇族が限定される中、退位の容認は皇位を一気に不安定にする。」

   この八木氏の考えは、天皇は「玉」として自由意思を認めず、お飾りの存在にして神棚に祭り上げておけば良いという傲岸な発想であり、「尊皇攘夷」の名の下に御所に大砲をぶっ放す如何にも長州的な発想だ。明治の典範で伊藤は譲位に反対したが、井上毅は賛成している。つまり終身在位は明治政府内部の一致した考えではない。むしろ伊藤が譲位に反対したのは、袞竜の袖に隠れて長州の専制を可能にするためではなかったか。維新の功労者である伊藤を悪く言うつもりはないが、別に終身在位でも政治利用は起り得る。また皇位継承資格者が限定されるなかでの御譲位は、皇位の安定的継承を脅かすというが、それは政府の政策的無作為を棚に上げた議論であり、文句は陛下ではなく政府に対して言うべきである。倒錯した議論である。

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