亀井静香「日米安保条約を破棄すればいい」(『維新と興亜』第14号)


 『維新と興亜』第14号(令和4年8月28日発売)に掲載した亀井静香先生のインタビュー「日米安保条約を破棄すればいい」の一部を紹介します。

■ポチの流れが政治の主流になってしまった
── 先日凶弾に倒れた安倍元総理は、「日本を、取り戻す」と言っていましたが、結局対米従属を強めてしまったのではないでしょうか。
亀井 晋三が日本を取り戻そうとしたのであれば、日米地位協定の改定に取り組むべきだった。日本はアメリカという飼い主のポチだと見られているが、ポチにだって権利はあるんだよ。飼い主が日本に来て、好き勝手なことをやっても日本の国内法で罰することができない。そんなばかなことがありますか。
 いま、晋三を評価する声が高まっているけど、晋三が地位協定に手をつけなかったのは残念だったね。地位協定に手をつけず、戦後レジームからの脱却ができますか。沖縄で米軍基地からコロナの感染が広がったのは、米軍に対して日本の法律に基づいた検疫ができないからだ。外国軍に対して国内法を適用することは、主権国家として当然のことだ。ドイツやイタリアも、地位協定を改定して米軍に国内法を適用できるようにしたでしょ。
 ところが、現在の日本の状況は占領時代と何も変わらない。サンフランシスコ講和条約が発効して日本が主権を回復した後も、米軍は日本に居座っている。かつては、米軍の撤退を求める声もあった。一九五五年の保守合同前の日本民主党は、鳩山一郎をはじめとする民族主義的な系譜をひいていたんだよ。しかし、保守合同によって吉田茂流のポチの流れが政治の主流になってしまった。
 現在、野党の中には地位協定反対を主張する政党もあるが、自民党は地位協定改定を表にすら出さない。飼い主に唯々諾々としたがうだけで、何も言わない。ポチのままでいる方が楽ちんだと思っている連中ばかりだ。
 多くの国民もポチのままでいいと考えているのだろうね。だから、政治家も波風立てず、黙っていた方が選挙に有利だと考えている。日本人としての誇りを捨てて、損得だけで動くようになってしまったんだよ。マスコミもそういう流れの中で飯を食っているから、異論を唱えない。

■「自分の国は自分で守る」とはっきり言え!
── 属国状態から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。
亀井 日米安保条約を破棄すればいい。本来は、日本のリーダーが「アメリカに守ってもらう必要はない。自分の国は自分で守る」とはっきり言わなくちゃいかん。
── ただ、保守派の中には「安保条約を破棄すれば中国が攻めてくる」という声が少なくありません。
亀井 仮に中国が攻めてきたら、最低限「相打ち」に持ち込めばいい。現在の戦争では、外国軍がいきなり日本に上陸し、地上戦になるようなことはない。仮に中国が軍事的行動を起こすとすれば、日本に対するミサイル攻撃ですよ。そうした攻撃を抑止するためには、少なくとも北京に対して報復できる力を日本が持てばいい。場合によっては核武装も考えればいい。
── 不平等な地位協定が改定されないばかりか、アメリカに対する「思いやり予算」も増え続けています。
亀井 2020(令和4)年度からの5年間の負担総額は、1兆550億円にまで拡大した。いまは飼い主がポチに餌をくれるどころか、ポチの餌もとりあげようとしているんだ。2016年の米大統領選挙で、トランプは日米関係の実情を知らずに、「日本は安保タダ乗りだ」などと勝手なことを言っていた。だから、俺はトランプ当選に危機感を抱いたんだよ。
 アメリカのメディアも日本のメディアも、クリントンが勝利すると言っていたが、俺は2016年5月の時点で、絶対にトランプが勝つと確信した。民主党の候補者選びでサンダースが負けたからだ。その結果、サンダースを支持した民主党系の連中の票がトランプに流れ、トランプが勝つと思ったんだ。
 そこで、就任前にトランプと話をつけなきゃならんと思った。そこで、石原慎太郎と二人で、トランプに対して意見交換を申し込んだ。投票日直前の2016年11月に入って、ようやく向こうから、「11月7日に会談をセットします」と正式に返事が来た。そこで、すっ飛んで行ったんだ。ところが、アメリカに到着すると、選挙は大接戦のままトランプ当選が決まり、結局会談はできなかった。

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