山崎行太郎×金子宗德×『維新と興亜』編集部「座談会 『Hanada』『WiLL』『正論』ネトウヨ保守雑誌の読者に問う! 第二弾 グローバリストに甘すぎる『保守』」(『維新と興亜』第10号)


『維新と興亜』第10号(令和3年12月28日発売)の山崎行太郎先生、金子宗德先生、『維新と興亜』編集部による座談会「『Hanada』『WiLL』『正論』ネトウヨ保守雑誌の読者に問う! 第二弾 グローバリストに甘すぎる『保守』」の一部を紹介します。

山崎行太郎×金子宗德×『維新と興亜』編集部「座談会 『Hanada』『WiLL』『正論』ネトウヨ保守雑誌の読者に問う! 第二弾 グローバリストに甘すぎる『保守』」(『維新と興亜』第10号)

 今回はPHP研究所が刊行する『Voice』も批判の対象に加え、竹中平蔵氏らの新自由主義者、グローバリストの言説を垂れ流す「保守雑誌」の化けの皮を剥ぎます。『保守論壇亡国論』などで保守思想家を撫で斬ってきた山崎行太郎さんと、「国体」を基軸とする独自の編集方針を貫く『国体文化』(日本国体学会機関誌)の編集長を務める金子宗德さんと本誌編集部メンバーが鋭く斬り込みます。

■「竹中組」のプロパンダ誌に堕ちた「保守雑誌」
── 小泉政権以来の規制改革・民営化は、共同体の破壊や格差の拡大をもたらしただけではなく、わが国の安全保障を弱体化させました。例えば、第二次安倍政権で進められた一連の農業改革によって食料自給、食料安全保障が脅かされ、水道民営化によってフランスの水メジャーによる水道支配に道が開かれようとしています。竹中平蔵氏らが推進してきた規制改革は、いずれも大企業やグローバル企業の意向に沿った政策であり、国民資産を外国勢力に献上する売国的政策と言っても過言ではありません。本来、愛国者、保守派は先頭に立ってこうした政策に異を唱えるべきです。ところが、『WiLL』などの「保守雑誌」は、規制改革の問題点には沈黙し、新自由主義者の主張を喧伝しています。「保守雑誌」が、グローバリストのプロパガンダ誌に堕ちてしまったということです。
 例えば、『Voice』(平成二十六年十月号)は、竹中氏の「『ネオ・アベノミクス』のすすめ」を載せました。ここで、竹中氏は「地方創生の重点は、地方自治体の規制改革や…コンセッション(インフラ運営権の売却)など、地方の自治改革を促すものでなければならない」と持論を展開しています。さらに竹中氏は、安倍総理(当時)がダボス会議に基調講演者として招かれ、国家戦略特区による岩盤規制の突破、法人税率の引き下げなどの公約を明らかにしたことを特筆し、「今回の成長戦略では、岩盤規制への取組にまだまだ不十分な点はあるものの、概ね公約した項目が織り込まれたのである」と説いています。
 『WiLL』も同様です。同誌平成三十年二月号には、竹中氏の「安倍政権で第四次産業革命を迎え撃て」を載せています。コロナ禍によってインバウンド依存の弊害が露呈することになりましたが、竹中氏は次のように書いていたのです。
 「訪日外国人旅行客が増加しているように、安倍内閣は現時点でできることをしっかり実行している。ですが、次の時代をつくるための政策は、まだ提出されていません。/たとえば、いつまでも移民を禁じ続けるのか……」
 『WiLL』は新自由主義者に加担し、外国人労働者の受け入れ拡大の旗を振ってきたということです。これらはほんの一例に過ぎません。竹中氏に連なるグローバリストたちが「保守雑誌」を舞台に、繰り返し規制改革推進論を説いてきたのです。
山崎 竹中だけではありませんね。例えば、嘉悦大教授の高橋洋一は『Hanada』や『WiLL』の常連ですよ。高橋は大蔵省(財務省)から引き抜かれて竹中の「子分」になりました。この高橋に岸博幸と原英史を加えて、「竹中組」、「竹中一派」が成立しています。
 高橋は、令和三年五月に、コロナウイルス感染状況について「この程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」などとツイッターに投稿し、内閣官房参与辞任に追い込まれました。この時、窮地に追い込まれた高橋に、いち早く「高橋くん、頑張れ」「天才・高橋洋一、負けるな」と、励ましのエールを送ったのが、「親分」の竹中です。
 竹中というと、すぐに「パソナ」という言葉が思い浮かびますが、それ以上に彼が仕切っている「アカデミーヒルズ」や「ポリシーウオッチ」のようなシンクタンク的な研究団体の存在に注目すべきです。「ポリシーウオッチ」には高橋、岸、原ら、竹中組の面々が参加していて、この組織の周辺には、多くの学者や実業家、ジャーナリストたちが控えています。竹中が築き上げた人脈とそのネットワークが、竹中平蔵「親分」を守っているのです。
 竹中は、慶應義塾大学教授を定年退職した後、東洋大学に移り、同大学教授に就任しています。東洋大学に移ったのは、同大学副学長の松原聡が、竹中一派の一人だからです。高橋も銭湯での時計泥棒事件の時までは東洋大学教授でした。東洋大学は、竹中組の縄張りといっていいでしょう。

■新自由主義を牽引してきた『Voice』
── 『正論』は、原英史氏を頻繁に登場させています。例えば、同誌令和三年九月号には、原氏の「『第三臨調』創設せよ:国家のモデルチェンジ急げ」が載っています。ここで原氏は、〈規制緩和・規制改革は一九九〇年代以降に繰り返し時の政権の重要課題となった。/しかし、多くの分野で、官僚機構や旧モデルの受益者たちの抵抗を受けて、改革は進まなかった〉と持論を展開しています。
金子 保守系言論人に竹中氏の経済思想が浸透してしまっているのですから、わざわざ竹中氏本人が登場するまでもないということでしょう。色々と調べる中で驚いたのは、「保守雑誌」の看板論客とされる櫻井よしこ氏が、平成十三年に竹中氏との対談本『立ち上がれ!日本―「力強い国家」を創る戦略』を出していたことです。この対談はPHP研究所の発案で実現したもので、『Voice』に掲載されたものをまとめたものだそうです。
── 最も先鋭な形で新自由主義的な思想を拡散してきたのが『Voice』だと思います。
金子 昭和五十二(一九七七)年十二月に創刊された『Voice』には、発刊の言葉として次のような文章が掲載されています。
 「二十三年後に迎える二十一世紀。その時あなたは、日本はどうなっているだろうか。いやその前に、日本はこのままでいいのだろうか。為すべきこと、考えるべきことが打棄られていないだろうか。/いま、経済はかつてない不況にあえぎ、政治は混迷の姿を呈し、教育の見直しも叫ばれている。/しかもまた、近い将来確実に直面する課題を山ほどかかえている。エネルギーを中心とした資源の問題、人口・老齢化社会・福祉の問題、こうした中で生きてゆくお互い一人ひとりの心のあり方、社会的正義の求め方……」
 「かつてない不況」とはオイルショック後の不況を、「政治は混迷」とはロッキード事件による混乱を指しています。「教育の見直し」とあるのは、非行問題の深刻化に対応しなければならない時代を反映しているのでしょう。また、「福祉の問題」に言及している点に注目すべきです。
 創刊号の実質的な巻頭論文は、香山健一の「日本病の診断」です。全学連委員長を務めた新左翼活動経験者である香山は、当時、学習院大学の教授を務めると共にウシオ電機設立者の牛尾治朗が率いるシンクタンクに参画していました。
 当時、「英国病」といった先進国病が話題になっていましたが、香山は日本を人間の身体に見立て、「甘え」を抑制する社会ホルモンが不足し、その結果社会血管系の中の血糖である「甘え」の濃度が許容範囲を超えて異常に増大したために「日本病」が生じていると主張しました。
 香山によれば、従来、日本には倫理規範と家族制度から成る「恩の構造」が存在し、「甘えの構造」の自制メカニズムの役割を果たしていましたが、敗戦によって伝統的な倫理規範が否定された結果、「甘えの構造」がむき出しになったと言います。そして、彼は、この「日本病」が日本の外交・内政のあらゆる面で将来の総合安全保障を危うくしていると警告し、治療のために十箇条の注意事項を挙げています。その中には、「報恩の心を育み、豊かな心のあり方を教えること」とある一方、こんな項目も見られます。
 「自主精神を衰弱させ、依存心とエゴを増大させるような過度の福祉は抑制されなければならない」、「全体としてはチーフガバメントを志向し、民間の活力による自立と連帯を大切にし、なにもかも国家に依存し、逆にあらゆる責任を国家に転嫁するような傾向に歯止めを加えること」
 このように、香山は、甘えの構造から脱却するためとして、質実剛健の気風回復を唱えて保守色を出す一方で、自己責任論や小さな政府論に発展するような議論も展開していたのです。もちろん、こうした議論が持つ意味は、当時と(グローバリズムが進展した)今日とでは異なっているわけですが、『Voice』には新自由主義的と親和的な論調が創刊当初からあったということです。
山崎 渡部昇一が竹中平蔵と対談し、小泉改革を擁護したのも『Voice』(平成二十一年八月号)でしたね。ここで、渡部は〈いま世間では「最近、ここまで不景気やリストラが吹き荒れているのは、みんな小泉・竹中改革が悪かったからだ」などとささやかれています。しかし、世界中が不況という状況を見てみると、何でもかんでも小泉・竹中改革のせいにするのは、いくらなんでも無理がありますね〉と、小泉・竹中改革を必死に擁護しました。
── 保守派への新自由主義思想注入において、牛尾治朗氏が果たした役割は大きいと思います。規制改革・民営化を唱える牛尾氏は、自ら国鉄民営化にも携わり、小泉政権下では「経済財政諮問会議」民間議員を務めていました。

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