稲村公望×深田萌絵「特別対談 米中台のグローバリストに挟撃される日本(『維新と興亜』第9号)


■米中結託の「G2」構想
── バイデン政権の対中政策の行方を考える上で、米中の橋渡し役を演じているグローバリストの動向に注目する必要があります。本日は、米中が結託して世界覇権を二分割しようという「G2」構想に警鐘を鳴らしてきた稲村さんと、グローバリストと連携して動いている浙江財閥に注目してきた深田さんに対談していただきます。稲村さんは、米中間で暗躍する人達を「国際拝金主義勢力」と呼んで警戒してきました。

稲村公望×深田萌絵「特別対談 米中台のグローバリストに挟撃される日本(『維新と興亜』第9号)

稲村 奇跡的な戦後復興を遂げたわが国は、一九八〇年代までは国際社会の主要プレーヤーとして認められていました。ところが、一九九〇年代になると「日本の代わりに中国を国際社会の主要プレーヤーとして位置づける」という発想が、アメリカの政策決定者の一部に芽生え始めたのです。
 そうした「G2」論的な考え方は、一九九五年の大阪APEC(アジア太平洋経済協力)の頃には日本に伝えられていたように思います。環太平洋構想を唱えるなど国際社会で影響力を持っていた大来佐武郎氏は一九九三年二月に急逝しましたが、大来氏は「G2」構想の代表的論者と知られるフレッド・バーグステンと電話で話をしている最中に意識を失い、その後亡くなりました。私は、大来氏がバーグステンから「今後、アジアの代表選手は日本ではなく中国だ」と告げられてショックを受け、憤死されたと考えています。
 バーグステンは二〇〇五年に、「中国は日本を抜いて間もなく米国に次ぐ世界第二位の経済大国になる。両国は二つの経済大国であり、二つの貿易大国である」と語っていました。
 この時期、国務副長官を務めていたロバート・ゼーリックも、中国を「責任あるステーク・ホルダー(利害共有者)」と位置づけようとしました。二〇〇七年に世界銀行総裁に就いたゼーリックは、「世界の経済問題の解決には米中両国の先導的な協力こそが不可欠であり、強力なG2なしにはG20も失望に終わるだろう」と主張するに至ります。この年から夏季ダボス会議がスタートし、天津と大連で交互に開催されることになりました。
 ダボス会議は、スイスの経済学者クラウス・シュワブが一九七一年に設立した世界経済フォーラム(WEF)が毎年スイスのダボスで開催している年次総会です。ダボス会議を仕切るグローバリスト、「国際拝金主義勢力」が、自分たちに都合のいいように各国の政権を操ろうとする意図が透けて見えます。
 中国の台頭に伴い、日米欧三極委員会も変化していきました。二〇〇九年四月に開催された「三極委員会」東京会合には、インドの参加者とともに、中国社会科学院教授の張蘊嶺氏が参加しています。これに伴い日米欧三極委員会の名称から「日米欧」が外れ、単に三極委員会と呼ばれるようになったのです。
 一方、欧米白人中心のビルダーバーグ会議にも、中国人が参加するようになっています。二〇一一年にスイス・サンモリッツで開催された会議に、当時外務次官だった傅瑩が参加していたのです。一九五四年に発足したビルダーバーグ会議は、毎年一回、欧米の有力政治家、外交官、財界人、マスコミ幹部らが集まり、世界のあり方について議論する秘密会合とされています。G2推進派のゼーリックも、二〇〇九年にギリシャで開催されたビルダーバーグ会議に参加していたようです。

■グローバリストと連携する浙江財閥の末裔たち
深田 ダボス会議に参加している華僑系の大企業の経営者たちが、浙江財閥の流れを汲んでいる人たちであることに注目すべきです。この浙江財閥の末裔たちが連携してきたグローバリストのビジネス戦略と中国の世界支配戦略は一致していたのです。
 浙江財閥は、一九世紀末から二〇世紀初頭にかけて中国大陸で大きな影響力を持っていた、上海を本拠にする金融資本の総称です。浙江省や江蘇省出身者が中心だったことから浙江財閥と呼ばれています。
 浙江財閥は戦前から米民主党政権と緊密な関係を持っていたとされています。浙江財閥の一人、宋嘉澍(チャーリー宋)はメソジスト派の宣教師で、三人娘を米国に留学させています。長女・靄齢は財閥の御曹司、次女・慶齢は孫文、そして三女・美齢は蒋介石に、それぞれ嫁いでいます。
 そして、浙江財閥の背後にいるのが「青幇」です。「幇」とは中国で昔からある相互扶助会のことで、青幇はもともと大運河の漕運労働者の自衛団体でした。その後、彼らはユダヤ系のサッスーン財閥と連携し、アヘン密売で暗躍していました。
 台湾の半導体産業、そして中国のビッグテック(大手IT企業)も、青幇の末裔やその関係者たちによって創設されました。この事実を理解しないと、中台関係の実態は見えません。
 例えば、台湾メモリ大手のウィンボンドは、青幇のボス杜月笙の右腕だった焦廷標の息子・焦佑鈞が創業した会社です。半導体受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、焦延標の力を借りて張忠諜が創業しました。そして、今回解放された、ファーウェイ最高財務責任者(CFO)の孟晩舟は、杜月笙と周恩来の共通の部下である孟東波の孫です。ウィンボンド、TSMC、ファーウェイの三社は支え合いながら成長してきたのです。また、アリババ共同創業者の蔡崇信の祖父も、杜月笙の弁護士として活動していました。
── 日本政府は、TSMCの工場誘致に前向きの姿勢を示しています。
深田 いまTSMCは、ソニーグループと協力して熊本県に工場を建設しようとしています。投資額は八千億円に上ると見られており、日本政府がその半分の四千億円を負担すると報道されています。この動きについては、『日経中文網』も否定的に報じていて、外資の誘致に数千億円の助成金を出すのは異例であり、そこに血税が注がれることには批判が出ると伝えています。また、TSMCは過去に合弁事業という形で半導体工場を建設したことはないとも報じています。
 四千億円もの資金が出せるなら、なぜもっと早くルネサスを救い、日本の半導体産業を守らなかったのでしょうか。日本は自力で半導体産業を再建することができるのですから、TSMCの誘致に巨額の血税を注ぎ込むようなことはやめるべきです。
 私は、TSMCをはじめとするファーウェイ周辺の台湾半導体産業は、日本とアメリカの半導体産業を潰して、世界の半導体産業を牛耳ろうとしているのではないかと警戒しています。また、日本人は台湾半導体企業経由で情報が中国に盗まれる危険性をもっと認識し、スパイ防止法を制定すべきです。(つづく)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です