アマゾンのレビューを書かせていただきました。
まずは坪内隆彦氏の『維新と興亜に駆けた日本人』である。
本書は西郷南洲から内田良平まで、明治~戦前昭和期に活躍した國體の理想を追求した20人の評伝である。
著者が編集長を務める「月刊日本」の連載をまとめたもので、連載の全体像およびそこからの単行本収録者は著者ホームページで示されている。著者は、「私利私欲を優先させ、長いものに巻かれ、行動する勇気を持たない。国家の理想を描かず、愛国心を持たず、ただ強い国に阿る。そのような政治家や言論人は、決して本物の日本人ではない。」(はじめに)と強く語る。では著者にとっての「国家の理想」とは何か。「国体の理想の追求はまた、物質至上主義、人間中心主義、競争至上主義といった西洋近代文明のあり方を乗り越えようとする文明戦でもあった。」(同)という。本書は、反共を旨とした戦後の右翼思想に一石を投じるとともに、「国家の理想」を抱いた真の日本人のあり方を戦前の日本人の生き様を通じて描こうとした労作である。
次に同じく坪内隆彦氏の『アジア英雄伝』である。
興亜論者がアジアの志士とともに目指した西洋近代文明の克服。この大理想が完全に忘却され、戦後日本はいまだに対米従属の状況に甘んじている。これは占領政策によって自虐史観と物質至上主義を植え付けられたからだという。つまり日本がアジアと向き合うためには、まず国内維新を必要なのだ。
アジア主義は、アジアの広大かつ多様な歴史、宗教、民族、文化を前提としていないといわれる。だがアジア主義はアジアに一様な共同体を確立しようという動きではない。アジアの多様性を、多様なままにその特色を発揮しつつ、相互に認め合うことを理想としている。本書は歴史人物の評伝でありながら、そのような著者の理想が伝わるものとなっている。
本書はそうした興亜論、対米自立の最良の手引きである。
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