アマゾンレビュー「ルポ ニッポン絶望工場」


本日紹介するのは出井康博の『ルポ ニッポン絶望工場』である。私がアマゾンに書いたレビューを引用する。

外国人を酷使し、見捨てられる日本

日本にも他国と同様、多数の外国人が「移民」として流入している。しかし政府は公式には移民政策をとっていない。彼らは「留学生」や「研修生」という名目で日本に入ってきている。これが非人道的な低賃金労働の温床となっている。
彼らを酷使する日本企業は無論、現地の業者、日本語学校などが彼らを送り込み、ピンハネをしている実態も描かれている。
彼らがこの構造に気づいたとき、日本人を恨み、「反日」化して日本から去っていく…。
一説には欧米で繰り返されるテロ行為はこうした低賃金労働による「恨み」が大きな影響を与えているとも言われるだけに、この問題は看過できるものではない。
一般の日本人にも無縁な話ではなく、彼らが超低賃金労働で働かされていることは日本人労働者の賃金の下降圧力にもなっている。
もはや現代日本の生活は彼ら超低賃金外国人労働者の存在なしには成り立たない。
しかしこの生活は法や人道を公然と無視する労働環境によってまかり通っているのであって、われわれは今の「豊かな」生活なるものを根本的に疑ってかかるべきではないだろうか。
ヒトモノカネが「自由」に行きかうグローバリズムがゆがみを見せる中で、全く新しい共生の理論が求められているように思う。

ところで「絶望工場」という書名は鎌田慧のルポから来ていると思われるが、鎌田のルポも私は好きである。いわゆる左翼的な論調ではあるが、非正規雇用の問題など低賃金労働の問題点を先駆的に取り上げたことは注目すべきである。

「アマゾンレビュー「ルポ ニッポン絶望工場」」への2件のフィードバック

  1. 人の「恨み」ほど恐ろしいものはない。
    平和や豊かさに慣れ、毎日心を殺して仕事と金儲けに勤しみ、利を得るためにコストカットを当然と見なすようになると、このような単純な事を忘れがちになるのかもしれませんね。

  2. Nさま
    いつもコメントありがとうございます。
    企業という組織が持つ恐ろしさのようなものもあるような気がします。
    個人だったら当然思い至る人の感情の部分も、組織としての決定となると途端に通りづらく、考慮されなくなる。
    これはこの問題に限らず企業にまつわるあらゆる問題で顔を覗かせているような気がします。

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