アマゾンレビュー「山本直人『敗戦復興の千年史』」


本日紹介するのは山本直人氏の『敗戦復興の千年史』である。わたしがアマゾンに書いたレビューは以下の通り。

白村江戦と大東亜戦争の交錯

昭和二十一年八月十四日、昭和天皇は首相、閣僚が出席したお茶会で、「(白村江の敗戦の後に)天智天皇がおとりになった国内整備の経綸を、文化国家建設の方策として偲びたい」と仰せられたという。大東亜戦争の敗戦という事態に直面したとき、昭和天皇が思い起こしたのは白村江の敗戦に向き合った天智天皇のお姿であった。わが国の悠久の国史においてただ二回だけの敗戦であり、どちらも皇室の存続の危機でもあった中で微妙なかじ取りを迫られた時期であった。
この両時期とも日本は外来の律令制度や「民主」制度をひたすら導入することに努めた時代であった。後の時代から見れば、そのように外来の文化を際限なく受け入れて、日本は大丈夫かと思わず考えてしまうような状況であった。しかしそれはひとまず勝者の文明を受け入れたうえで、長い年月をかけて押し返そうという決意でもあった。そうした千年先を見据えた計によって、日本の存続はなされたのである。

そのような両時代を往復しながら「千年史」を考察する一冊である。

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