土民思想とはなにか


石川三四郎『農本主義と土民思想』には次のような一節がある。

土民は土の子だ。併しそれは必ずしも農民ではない。鍛冶屋も土民なら、大工も左官も土民だ。地球を耕し――単に農に非ず――天地の大芸術に参加する労働者はみな土民だ。土民とは土着の民衆といふことだ。鍬を持つ農民でも、政治的野心を持つたり、他人を利用して自己の利慾や虚栄心を満足するものは土民ではない。土民の最大の理想は所謂立身出世的成功ではなくて、自分と同胞との自由である。平等の自由である。

石川三四郎は農本主義と土民思想を対比的に捉えている。それ自体は石川の思想を考える上では重要なのだろうが、ここでは措く。
農本主義は農家の圧力団体的思想ではなく、むしろ農を中心とした自然と共生する生活を通して、競争と利欲にまみれた世界からの脱却を目指したものだ。その意味では確かに「農本主義」というより「土民思想」というほうが分かりやすい。
さらに、風土論も加えられたらいうことない。国固有の風土、文化、土着に基づく思想こそ必要だ。

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