●新選組の男たちの姿を、女性の視点で描いた愛の物語
平成30年12月15日、映画『輪違屋糸里~京女たちの幕末~』が遂に封切られた。同日午前、有楽町スバル座の初日舞台挨拶がスタート。
幕末の京都。激動の時代、新選組の男たちの姿を、女性の視点で描いた愛の物語。映画原作は『壬生義士伝』に続く浅田次郎さんの新選組第二弾『輪違屋糸里』。京の色街に生きる3人の女性。島原輪違屋天神・糸里、桔梗屋天神・吉栄、そしてお梅。糸里は土方歳三に想いを寄せ、吉栄は平山五郎との愛に翻弄される。お梅は芹澤鴨の愛人。
「百姓」と「武士」という超え難い壁。近藤勇と芹澤鴨の対立。武士ではない者が武士となるために踏まねばならない踏絵。芹澤暗殺事件の陰で交錯する、花街の「美」と儚い夢の「哀」が描かれている。
大勢の報道陣が待ち構える中、藤野涼子さん、溝端淳平さん、佐藤隆太さん、塚本高史さん、そして「鬼平犯科帳」シリーズなどの演出を手掛けてきた加島幹也監督が登壇。
藤野さんは糸里役、溝端さんは土方役、佐藤さんは平山役、塚本さんは芹澤役を演じた。藤野さんは2000年2月2日生まれで、(平成30年12月)現在18歳。撮影当時は、16歳だった。藤野さんが、撮影初日、溝端さんと2人で歩くシーンを振り返り「溝端さんが一緒に関ジャニ∞の『無責任ヒーロー』を歌ってくれた」と語ると、溝端は「当時の藤野さんはまだ16歳だったから、何を話していいものかわからずに必死だった」と振り返った。藤野さんはまた、佐藤さんから「なかなか涙が流せなかったときに『そんなこと気にしなくていいんだよ、みんな待ってるから』って言っていただいた」と語っていた。
加島監督は、「当時、藤野さんは高校1年生の16歳。渋谷の喫茶店で初めて会ったときには、幼く、あどけない様子だった。頼りない感じさえあった。しかし、顔つきがどんどん変っていき、凛としてきた」と振り返った。
ここで、サプライズ。原作者の浅田次郎さんが登壇。
「緊張感のある、素晴らしい映画だ。ストーリーは、156年前に実際に起こったこと。新選組を演じるのはとても難しい。これまで土方役を演じた役者さんは多いが、未だ決定版と言えるものがない。溝端さんが演じた土方が決定版になるはず。糸里のセリフは、原作を一言一句、大切にしてくれた。つかみどころのない平山を演じるのも難しい。また、芹澤はこれまで誤って伝えられてきた。悪役扱いの新選組の中でも最も悪役とされてきた。酒癖が悪かったのはその通りだが、尊皇攘夷運動に挺身した大人物であり、教養人でもあった。芹澤の男の色気が出ていた。難しい役を、皆が立派に演じてくれた。映画を観て、短く感じた。いい映画の証拠だ」と絶賛した。
●現代社会に生きる人のヒントに
最後に、加島監督は次のように語った。
「現在は生きにくい時代だ。先行きが見えない混沌とした時代だ。この映画の中の人物は皆、高潔に、真っすぐに生きている。眼差しが良い。そうした生き方が、現代社会に生きる人のヒントになってほしい」
筆者が本日封切られた『輪違屋糸里』を観るのは、試写会に続いて二度目。
「古き良き日本の歴史と伝統と文化に稽み、『本物の時代劇』を創造し今を照らす、それが日本の再生に通じる」。そう信じて時代劇再生に取り組んできた花房東洋先生が、企画監修を務めた。
幕末の京都とそこに生きた日本人の立ち居振舞いを忠実に再現しようとする制作者の思いが伝わる映画だ。榎木孝明さんが会津藩主・松平容保役で特別出演。
幕末の狂気の時代。男たちに翻弄されつつ成長していく糸里。「男はんの夢のためやったら、おなごは死んでもええのどすか─ほんまにそう思うんやったら、斬られて本望や」。糸里の凛とした姿が大きな感動を呼ぶ。
■キャスト
糸里:藤野涼子
土方歳三:溝端淳平
吉栄:松井玲奈
平山五郎:佐藤隆太
お梅:田畑智子
芹澤鴨:塚本高史
音羽太夫:新妻聖子
松平容保:榎木孝明(特別出演)
甘味処・隠居:石濱朗(特別出演)
■主題歌
渡梓「万華鏡」