中野正剛の天皇親政論②─『建武中興史論』「楠正成」


 中野正剛は、『建武中興史論』「楠正成」で次のように書いている。
御親政ということばの、ほんとうの意味は、特殊の人間に政治をお任せにならないということです。いかに偉くとも、源頼朝とか何とか、特殊のものに政治をおゆるしにならない。御親政とは、天皇みずから責任を負われて、万事を聞し召されるということだ。
みずからやられるということは、民の中にいて、民とともにやられることで、日本の皇室は外国のごとく、征服国家の君主じやない。国民とともにおられる。日本人、大和民族なるものが、歴史の上に、また地上に現われた時から皇室はおられる。
(中略)
この御親政をですよ、官僚的に解釈して、人民はりくつをいうことはならぬ、お前たちはだまつて協力すればよい、それが天皇親政の御趣旨だというものがあるが、冗談ではない。天皇は特殊の人とともに政治をしない、財閥とともに政治はしない、武人ともにとも雄藩とともにともいわない、人民とともにと仰しやる、それだからこそ御親政である。それを人民の政治にたいする発言、熱誠、微衷を一切抑えつけてしまつて、一人でなさる政治が天皇御親政であるなどと、このようなことを、このごろのたいていの馬鹿ものの御用学者などはいつている〉

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