「瑞穂の国」を破壊する農協改革


三橋貴明氏の『亡国の農協改革』(2015、飛鳥新社)を読んでいて、怒りが込み上げてきた。安倍首相は、政権奪還をかけた2012年12月の総選挙を前に、『文藝春秋』で次の様に述べている。
「日本という国は古来から朝早く起きて、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら、秋になれば天皇家を中心に五穀豊穣を祈って来、『瑞穂の国』であります。自助自立を基本とし、不幸にして誰かが病に倒れれば、村の皆でこれを助ける。これが日本古来の社会保障であり、日本人のDNAに組み込まれているものです。
 私は瑞穂の国には瑞穂の国にふさわしい資本主義があるだろうと思っています。自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、しかしウォール街から世界を席巻した、強欲資本を原動力とするような資本主義ではなく、道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります。
 安倍家のルーツは長門市、かつての油谷町です。そこには、棚田があります。日本海に面していて、水を張っているときは、ひとつひとつの棚田に月が映り、多くの漁り火が映り、それは息を飲むほど美しい。
 棚田は労働生産性も低く、経済合理性からすればナンセンスかも知れません。しかし、この美しい棚田があってこそ、私の故郷なのです。そして、その田園風景があってこそ、麗しい日本ではないかと思います。市場主義の中で、伝統、文化、地域が重んじられる、瑞穂の国にふさわしい経済のありかたを考えていきたいと思います。」
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いまとなっては、もはやブラックジョークにしか聞こえないが、この似非「保守声明」に続けて、三橋氏は次のように述べる。「しかし現実の安倍政権は、瑞穂の国どころか、ウォール街に象徴される一部の投資家、企業家の利益ばかりを追求する「改革」を推進している。派遣労働者の拡大、外国人労働者の受け入れ、社会保障支出の削減、混合診療の解禁、発送電分離、TPP、地域間格差を認める地域創生策、そして農協改革。一体全体、どこが「瑞穂の国」の資本主義なのか。全ての政策が、外国人を含む一部の投資家や企業家といった富裕層を富ませ、国内において「国民の所得格差」「地域間格差」「企業間格差」と三つの格差を拡大していくばかりである。2012年に安倍総理大臣が表明した「瑞穂の国」の資本主義は、要するにウソだったことになる。」と。
 先のモンサント法案成立といい、郵政民営化の推進といい、第二次以降の安倍内閣は、竹中平蔵等、外資の走狗と共謀し、我が国独立の基盤をなす農業や地方社会を根底から破壊する「改革」を推し進めている。

http://7net.omni7.jp/detail/1106579621

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