久留米に崎門正統派の学問を伝えた合原窓南④─恒屋一誠編『合原窓南先生伝』


 続いて、恒屋一誠編『合原窓南先生伝』(昭和18年12月)に基づき、久留米の崎門正統派の学問を伝えた合原窓南述『古語・仮字講義』の内容を紹介する。
  古語・仮字講義
朱子文集曰。平居暇日。琢磨淬厲。緩急之際。尚不免於退縮。
 朱子士風の衰へたるを嘆いて言ふ、平生家に居て暇有る日志を高うし氣を盛にして専ら文武をはげみ、是を精うする事工人の玉を琢て磨ぎ刀を淬(きたう)てとぐが如し、然るに急難起りて死生決する際に至ては、前後顧慮し志恐れて退き縮る事を兔れず、平生文武をとぎみがきするものさへ尚如此。
況游談聚議。習爲軟熟卒然有警。何以得其仗節死義乎。
 況や平生あそび聚りて無盆の咄をし、国家の用にもあらぬ世説の沙汰をいたし、彼処の風景此処の草花を亙に争ひ議かり、酒茶の会碁画の翫等の柔弱なる事になれ染み、これを風雅の事として日を送るもの、卒に事の出来て一大事と云ふ場に臨むで、何を以て身を節に仗り命を義に隕(おと)す事を得むや。
大抵不顧義理。只計較利害。皆奴婢之態。殊可鄙厭。
 凡そ士たる者は義を精ふし事理を明にして、身も心も義理のうちへ入れ置くべし、義理を後にして不顧明暮利害を計較して身の勝手便を求るものは、皆下部奴婢の態にして君子の殊に鄙み厭ふべき事也。
☞[続く]

「久留米に崎門正統派の学問を伝えた合原窓南④─恒屋一誠編『合原窓南先生伝』」への1件のフィードバック

コメントを残す