目下、政府自民党が推し進める「加憲」論に対し、以下の三つの理由で反対する。
第一に、首相は、自衛隊の存在を明記しない現行憲法が、自衛隊の存在と活動を不安定にしているというが、国民の九割は自衛隊の存在と活動を支持している。朝日新聞の調査では、六割の憲法学者が自衛隊を違憲ないしはその疑いがあると答えたそうであるが、最高裁は統治行為論で、自衛隊の合憲性に対する憲法判断は下さないのであるから、憲法学者の意見など所詮どうでもよい。このように、「主権者」たる国民の圧倒的大多数による確固たる支持基盤が存し、最高裁も憲法判断を下さない以上、自衛隊の存在は既成事実として確立されており、いまさらその存在を憲法に明記する実益などない。
第二に、仮に「加憲」によって自衛隊の存在を明記したとしても、憲法を純粋に解釈すれば違憲性の疑いは依然払拭されない。というのも、九条二項は、我が国の戦力の不保持、交戦権の否定を規定しているのであるから、「加憲」によって自衛隊の存在自体は認められたとしても、今度は「自衛隊の有する「実力」は、憲法の禁止する「戦力」に該当するから違憲だ」という意見が容易に想定されるからである。結局違憲論争は止まないのである。
第三に、自衛隊員には気の毒であるが、首相の指揮下にある現在の自衛隊は、どこまでいっても「警察予備隊」の延長に過ぎず、畏くも天皇陛下を大元帥に戴く「皇軍」ではない。つまり自衛隊には建軍の大義がないのである。そのような組織の存在を憲法に明記したところで、何等問題の本質的解決にはならない。段階論にもならない。
以上の理由により、政府自民党による「加憲」論に反対する。