「興亜の歴史を上海に見つける」②─『上海歴史ガイドマップ』で紹介した東和洋行について、陳祖恩著・大里浩秋訳『上海に生きた日本人―幕末から敗戦まで 近代上海的日本居留民(1868‐1945)』に説明がある。同書によると、東和洋行は、一八八六(明治一九)年に、鉄馬路(今の河南北路)と北蘇州路が交わる辺りに開業した。創業したのは、吉島徳三夫妻である。
初期の上海の日本旅館は、日本人商人や旅行者に宿泊の便を提供するとともに、上海で売春をしていた日本人娼婦に、売春のための場所を提供していた。こうした中で、東和洋行は『上海新報』一八九〇(明治二三)年十月に告示を出し、「醜業婦」の宿泊を拒絶すると宣言し、さらに、「御婦人にては、御夫婦達の外は、相当の御添書にても有之の外、あいまいなる婦人は一切御断申す事と致候」と声名した。
これを機に、上海日本人社会における東和洋行の知名度は急速に高まっていった。