「西洋近代への抵抗」カテゴリーアーカイブ

スメラ学塾①─日本的世界観を目指して

 『日本百年戦争宣言』で知られる孤高のエリート軍人・高嶋辰彦に思想的影響を与えた人物の一人が、仲小路彰である。高嶋が仲小路と初めて会ったのは、昭和十三年十月二十七日のことであった。
 独自の「日本世界主義」思想を展開していた仲小路らは、昭和十五年に「スメラ学塾」を立ち上げた。その講義の中核を担ったのは、国民精神文化研究所に所属していた小島威彦である。小島は、日本中心の独創的な世界史を講じた。
 仲小路は、昭和十七年に『米英の罪悪史』を著し、以下のように書いている。ここには、欧米的価値観に基づいた政治システムに対する鋭い批判が示されている。
 〈思へば、英米の議会主義政治、政党主義的政治は一時全く世界政治の理想の如く宣伝され、その自由主義的民主政治は、実に政治的体制の典型として偶像化されました。これを以て進歩的なりとし、それに反対するものを悉く反動的保守的として排撃し、英米はその政治的偶像をもつて他のすべての諸国を、その政治的統制の下に独裁するのでありました。あらゆる植民地国は、自らの伝統的なる政治組織をもつて全く旧きものとして廃棄し、英国的政治の体制下に編入され細胞化されるのでありました。しかももし一国が強大となるや、これを抑圧するために、米英には適し、その国には不利なる米英的憲法、法律等を制定せしめ、さらにそれを英米的世界の現状維持のみを擬護する国際法をもつてしめつけ、全くその自由を剥奪することを以て、自由主義政治と称せしめ、彼等をして全く英米化し、米英依存せしめるのでありました。しかもすでに民主主義的なる米英的世界秩序は、それ自らの中に矛盾を激化し、末期的没落に瀕するのであります。
 かくして今次の大戦こそ、それ等一切の旧き民主主義的米英勢力圏を徹底的に粉砕すべき戦争であります。もしそれを為さずして、たゞ従来の米英的支配権を排撃して、それに代るに再び自らが米英的地位を占め、その搾取を繰返すことあるか、それともまた米英的なる近代国家体制、民主主義政体を植民地の独立として実施するか、或はまたソヴエート的なる民族解放理論がいかなるものなるを認識せず、帝国主義侵略を避けんとして、東亜の解放を実現せんとする如きあらば、これは全く皇軍の赫々たる戦果を無にするのみならず、却つて大東亜民族は不統一のまま殆ど救はるることなく、遂に克服すべからざる禍根を残すこととなるでありませう。まさに近代民主国家を根本的に否定し、海月なす、たゞよへる国々を修理固成するすめらみくにの国生みとしての日本世界史建設の大東亜皇化圏、すめら太平洋圏の復興を実現し、かくて大御稜威の下、アジアは渾然として、その根源的なるものに帰一するは、それ自らの本質的運命であります〉
 この仲小路の言説は、英米型民主主義を絶対視する、わが国の戦後言論空間においては、理解し難いものかもしれない。しかし、我々は改めて英米型民主主義が絶対なのかを問い直すべきではないか。

一帯一路構想─「特定国の覇権」か「参加国の共栄」か

 アジアとヨーロッパを連結する「一帯一路」構想は、現在中国によって主導されているが、このうち特に「一帯(One Belt)」は、かつて日本が主導していた構想である。アジア主義者大谷光瑞の「欧亜連絡鉄道計画」(昭和14年)や帝国鉄道協会の「中央亜細亜横断鉄道」(昭和17年)などの構想があった。「中央亜細亜横断鉄道調査部設置の趣意」には、以下のように書かれていた。
「……中央亜細亜横断鉄道とは大体支那綏遠省包頭、或は陜西省西安を起点とし、甘粛省甘州、新疆省ハミ、トロハン、カシガル等を経てアフガニスタンの首都カブール、イランの首都テヘランを過ぎイラクのバグダツドに接続せしめむとする延々七千余粁(キロメートル)に及ぶ鉄道なり。
 ……凡ゆる観点より重要意義を有し、特に変転極りなき国際情勢を想ふ時、東亜共栄圏確立上の交通動脈の一都としても其の重要性大なるものありと謂はざる可からず」
 「特定国の覇権」のためではなく、「参加国の共栄」のためにどうすればいいのか。今、古くて新しい問題が浮上している。

「アジアは繁栄してはいけないのか」─ノルディン・ソピー博士「EAEC:事実と虚構」

 1995年1月17日、日本マレーシア協会主催で「EAECを考えるシンポジウム」が憲政記念館講堂で開催された。ここで、マハティール首相のブレーンのノルディン・ソピー博士が「EAEC:事実と虚構」と題して基調講演を務めた。以下は、その講演録の一部である。EAECとはマハティール首相が1990年に提唱した東アジア経済協議体構想(当初は東アジア経済グループ構想)である。
 〈我々は日本に対してEAECに加盟するよう要請しているだけである。(中略)我々東アジア諸国が繁栄したいと望むことが、そんなに間違っているのだろうか。日本に対してその為のリーダーとなることを期待するのが、そんなに間違ったことなのであろうか。
 日本はアジアの国である、そして東アジアの国である。この地理的事実を避けて通ることは出来ない。つまり日本はこのアジアに属する国なのである。我々は日本に対して助けて欲しい、援助して欲しいと頼んでいるわけではない。この地域におけるリーダーになって欲しいと要求しているだけなのである。そして我々と共にこの機構に入って中心的な役割を果たして欲しいと要求しているのである。日本にはそれに相応しい地位と能力が備わっており、我々の平等な仲間であるが、率先して役割を果たすそんなパートナーとなって欲しいと要請しているのである。(中略)私は政府の人間でもなく、一人の学者に過ぎない。しかし、今お話ししたことは、私個人の意見ではなく、東アジア諸国の多くの人が共有する考えである。
 日本はアメリカを取るかアジアを取るかといった選択に直面しているわけではない。当然ながら日本はその両方を取らねばならない。
 しかしながら、もし日本がアジアに対し背を向けてしまうのなら、それはアジアにとって大きな損失となるであろう。そしてそれは日本にとっても大きな損失となるであろう〉

『大亜細亜』(大アジア研究会発行)第二号刊行

 平成28年10月30日、『大亜細亜』(大アジア研究会発行)第二号が刊行された。
 巻頭論説「トランプ大統領就任の意味と興亜の使命」は以下のように結んでいる。
 〈…今後の国際社会は国益と謀略に翻弄される時代になると書いたが、それは謀略渦巻く世界観に甘んじるということではない。国益と謀略の時代もまた、パワーポリティクスに基づく西洋発の世界観に他ならないからだ。短期的にそういう時代の到来への備えを怠ってはならないが、同時に長期的に西洋発の近代的価値観を克服する遠大な理想を抱かねばならない。
かつて我が国の先人たちは、単なる国家の生存を超えた理想を胸に抱き、その実現に邁進してきた。その代表的存在である興亜論は、国家や民族の自生的秩序を重んじ、各その処を得る共存共栄の秩序を「八紘為宇」の理想に求めた。謀略渦巻く国際関係の中で、「自由、民主主義、人権」に代わる旗印を掲げることは、われわれに課せられた崇高な使命であると信じる〉
目 次
 1面 トランプ大統領就任の意味と興亜の使命
 2面 樽井藤吉―「和」の精神により『大東合邦論』を唱えた(坪内隆彦)
 6面 アジア主義に生きた杉山家の伝承②(杉山満丸)
 10面 「東洋経綸」の魁、平岡浩太郎(浦辺登)
 12面 柳宗悦のアジア的価値観 (小野耕資)
 14面 大アジア主義と 崎門学の関係(折本龍則)
 16面  「筑紫都督府」と 大宰府の成立(山本直人)
 18面 西洋近代思想への抵抗 (坪内隆彦)
 19面 時論 外国人労働者問題 から見る目指すべき大道の覚醒 (小野耕資)
 22面 史料・『東洋学館趣旨書』
 23面 連載・大アジア医学の なかの日本②(坪内隆彦)
 24面 アルテミオ・リカルテ 生誕百五十年記念祭開催報告